1.「音」と「音楽」に特化した事業展開

 当社は、プロからアマチュアまでの幅広い顧客層を対象に開発した音楽用電子機器を、約130カ国のマーケットで販売するグローバル企業です。日本の本社は商品開発とマーケティングに特化し、海外での販売は当社グループ企業や販売代理店を通じて行っています。また、生産は海外のEMS企業に委託するファブレス体制を敷いています。
 当社製品のターゲット市場は、楽器を演奏するミュージシャンや音楽を制作するアーティストはもちろんのこと、カメラマンやジャーナリスト、ユーチューバーやポッドキャスター、放送や映画業界のコンテンツ・クリエーターなど、幅広い分野に及びます。それぞれの市場はグローバルで巨大ですが、各市場の一部には「良い音」にこだわるニッチなユーザーが存在します。このようなグローバル・ニッチ市場の規模は、当社が事業を展開するには十分である反面、大手企業では採算が取れず、参入が困難という側面があります。そのような比較的競合の少ない市場をターゲットにしていますが、あくまで当社は軸足を音楽・楽器市場に置いており、その姿勢が音にこだわるユーザーの支持を受け続けている所以です。
 当社は、固定費率の低いファブレス企業として、商品開発に経営資源を集中させることで、「音」と「音楽」に関連するグローバル・ニッチ市場を継続的に開拓し、ユーザー層の拡大とともに事業の成長を図っています。


※EMS企業:電子機器の受託生産を行う企業

 

2.グローバルな開発・生産・販売体制

開発体制
 当社の社員の半数は開発エンジニアで、そのほとんどが何らかの楽器を日常的に演奏しており、エンドユーザーの視点で商品開発を行っています。また、社内のエンジニアはコア技術と位置づけている、DSPプログラミング、ユーザーインターフェース設計、ファームウェア設計、アナログ電子回路設計、ボイシング(音創り)などに専念し、それ以外の設計は外注先の優れたリソースを活用している点が特徴です。

 

生産体制
 当社は自社工場を持たず、中国や東南アジアのEMS企業に生産を委託しています。効率的な生産体制によるコスト削減、部品の小型化に伴う最新の実装技術等は、商品企画とも密接に関連しており、EMS企業との良好な協業関係を重要視しています。ただし品質管理については、一貫性のある自社の基準を優先させるため、 子会社であるZOOM DCによって生産ライン上及び出荷前の厳格な検査体制を敷いています。このように市場のニーズや需要の季節変動に柔軟に対応し、生産関連の固定費を抑え、結果的にコストパフォーマンスの高い高品質な製品をユーザーに提供できるよう、最適な生産体制を構築しています。

 

販売体制
 当社の製品はまず海外の輸入販売代理店へ販売され、そこから地域の小売業者(楽器小売店、業務用機器販売店、家電量販店、オンライン販売業社など)に再販売されます。北米地域ではZOOM North America、南ヨーロッパ地域ではMogar Musicなどの子会社が、一貫性のあるブランディング戦略に則り、地域に応じた柔軟な販売体制を構築しており、その他の地域を含めておよそ50余りの輸入販売代理店が、グローバルな流通を網羅しています。日本においては、日本の本社が自社ブランドの輸入販売代理店の役割を果たしており、楽器小売店、卸問屋、家電量販店、ネット販売業社等へ直接販売しています。また、子会社のフックアップは輸入販売代理店としてプロオーディオ等の海外ブランドを取り扱っており国内での販売活動を広げています。

 

3.ブランドは国内より海外で浸透

 当社の海外売上高比率は約9割で、国内よりもむしろ海外でブランドが浸透しています。最大の市場は米国で、北米地域を担当するZOOM North America向けの売上が39%に達します。次いで南ヨーロッパ(イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル等を含む地域)が16%、日本と中央ヨーロッパ(ドイツ、ベネルクス3国、オーストリア、ポーランド、チェコ、スロバキア、バルト3国等を含む地域)がそれぞれ14%と続きます。中国の構成比は現在のところ2%ですが、欧米文化の浸透に伴って成長が著しい市場です。また、その他15%に含まれている東南アジア、ラテンアメリカ、中東などでは、未だ旧来型の楽器店中心の販売網が中心ですが、欧米型の家電量販店、オンライン販売業社などの台頭が徐々に始まっており、中流家庭の可処分所得の増大と相まって成長が期待できる市場です。

 

4.多様な製品カテゴリー

 当社の事業セグメントは音楽用電子機器のみの単一ですが、製品カテゴリーはアーティストやクリエーターの多様なニーズに応えられるよう多岐にわたります。

 

ハンディオーディオレコーダー(HAR)
 当社グループのハンディオーディオレコーダーは、楽曲配信で使われるMP3のような圧縮されたデジタル音声では無く、非圧縮音声で録音する高音質リニアPCMレコーダーです。マルチトラックレコーダーで培った録音技術を応用し、ロックミュージックを演奏するミュージシャン向けに開発しましたが、ミュージシャンのみならず、映像や放送分野等のクリエーターの間においても音声レコーダーとして使用されております。2020年7月に、2.4インチのカラータッチスクリーンを備えた操作性の高いフラッグシップモデル、H8を発売しています。

 

※MP3:音声ファイルを圧縮するための技術の1つであり、それから作られるファイルのフォーマット

※リニアPCMレコーダー:リニアPCM形式で音声データを圧縮せずに記録するICレコーダー。リニアPCMは、音声などのアナログ信号をデジタルデータに変換する方式の一つであるが、音質が劣化する原因となる圧縮等の処理を行わない方式

 

デジタルミキサーディジタルミキサー(DMX)/マルチトラックレコーダー(MTR)
 デジタルミキサーは、入力された複数の音声信号をデジタル信号に変換して音量や音質を調整し、複数の音声をミックスさせる電子機器です。マルチトラックレコーダーは、複数のトラッ ク(録音データの単位)を自由に選択し、録音/再生を行う事ができる録音機器で、ベースとなる曲を作成し、別トラックに歌、更に別トラックに音階の異なる歌を録音するといった多重録音ができる製品です。2020年8月に、ポッドキャスト収録に便利な機能をコンパクトにまとめたマルチトラックレコーダーPodTrak™ P4を発売しています。2021年11月には、4.3インチのタッ チスクリーンを搭載する、新世代のマルチトラックレコーダーR20を発売しています。

 

マルチマルチエフェクター(MFX)
 当社グループのエフェクターは、デジタル処理を使った、複数のエフェクトを内蔵したマルチエフェクターです。エフェクトは内蔵された種類を任意に組み合わせることが可能で、作成した音色は本体に記録して、フットスイッチを踏むことで、呼び出して使用することができます。当社は1990年に“ギターのストラップに取り付けることのできる小型マルチエフェクター”をコンセプトとした9002を発売して以来、ベースギター用、アコースティックギター用、それらの価格帯別モデル、さらにサックスやハーモニカといったアコースティック楽器全般に幅広く対応するモデルなど、様々な製品を発売しております。2021年10月に、フットスイッチで4つのPLAYモードに切り替えながら演奏することが可能なベース専用設計のマルチエフェクターB6 を発売しています。

 

※エフェクター:ギターやベース等の音色に変化を付ける機器で、単体のエフェクトペダルと、複数エフェクトが1つの筐体に内蔵されたマルチエフェクターに分類される

 

プロフェッショナルプロフェッショナルフィールドレコーダー(PFR)
 プロフェッショナルフィールドレコーダーは、屋外での使用を想定した、映像関連産業やサウンドデザイナーなどのクリエーター向けのレコーダーで、圧倒的に広大なダイナミックレンジを持つ32bitフロート録音や映像との高精度な同期を実現するタイムコードなどの機能を備えております。2020年11月に、超コンパクトでウェアラブルなフィールドレ コーダーF2、及びBluetoothでリモート操作可能なF2-BTを発売しています。

 

※ダイナミックレンジ:処理可能な音声信号の最小値と最大値の比率をいい、音量の抑揚に関する情報量を表す

※32bitフロート録音:24bitリニアに8bitの指数乗数を加えた記録方式。小さな音のボリューム (ゲイン)で録音されたものを編集で上げても音が劣化しないというメリットがある

※タイムコード:時間、時刻情報を符号化した電気信号

 

⓹ ハンディハンディビデオレコーダー(HVR)
 当社グループのハンディビデオレコーダーは、ハイレゾオーディオ音質での録音に対応 した音楽用ビデオレコーダーです。現在販売している製品は4K画質に対応しており、YouTube,LLCが提供する「YouTube」などの動画投稿サイトやSNSに、高画質・高音質の動画をアップロードすることができます。交換式マイクカプセルの最新規格V2に対応し、加えてマイ ク入力端子を2CH備えるQ8n-4Kを2021年12月に発売しています。Q8n-4Kは、バンド練習の録画や弾き語りの自撮りはもちろん、PC/Mac用の高音質なWEBカメラとして、ライブ配信やWEB会議にも使用することができます。

 

※ハイレゾオーディオ:JEITA(電子情報技術産業協会)の定義では、サンプリング周波数(kHz)と量子化ビット数(bit)のいずれかがCDスペックを超えているものをハイレゾオーディオといい、ここでいうCDスペックは16bit/44.1kHz又は48kHz

 

マイクマイクロフォン(MIC)
 Apple Inc.により提供される「iOS」デバイス及びGoogle LLCの提供する「Android OS」デバイ スに接続してCD品質のステレオレコーディングを行うことができる録音用マイクロフォンであ る、「iQシリーズ」及び「Am7」をラインナップしております。同時に高音質録音と編集機能を備えた「HandyRecorderアプリ」、スマートフォンのカメラ画像と弊社マイクで高画質・高音質の動画撮影を行える「Mobile HandyShareアプリ」を提供しております。 また、昨今のポッドキャストなどの配信用途に適したUSBマイクロフォン「ZUM-2」などのラインナップ拡充を進めております。

 

ボーカルプロセッサー(VCP)
 ボーカルやボイスといった人声に対し、音楽的ハーモニーを重ねる、あるいはロボットのような機械音声に変換する、さらには性別や年齢で変化する声質の要素をコントロールするボイスチェンジャーまで備えたエフェクター製品群です。ポッドキャストや動画配信者に便利なデスクトップ型ボーカルプロセッサーV3を2020年8月に発売しています。

 

オーディオインターフェース(AIF)
 オーディオインターフェースとは、コンピュータへの音声の出入り口になる製品です。コンピュータ内では、デジタル信号しか受け付けないため、音声をコンピュータに入力する場合は、アナログからデジタルへ、コンピュータの音声を聞く場合は、デジタルからアナログへの変換をオーディオインターフェースが受け持つことになります。当社グループでは、2014年にTACシリーズの商品展開を行って以来、普及の進んでいるUSB3.0規格に応じたUACシリーズ、当社の強みとするハンディタイプをUSB2.0で実現したUシリーズと、製品シリーズを展開しており ます。

 

Mogar取扱いブランド
 当社グループの南ヨーロッパ地区の販売代理店である連結子会社Mogar Music S.r.l.は、当社以外の製品ブランドを取り扱っております。Mogar Music S.r.l.が販売代理店として輸入・販売している当社以外のブランドについては「Mogar取扱いブランド」として独立のカテゴリーとしております。

 

フックアップ取扱いブランド
 2021年1月に株式を取得したことにより連結子会社となった株式会社フックアップは、当社以外の製品ブランドを取り扱っております。株式会社フックアップが販売代理店として輸入・販売している当社以外のブランドについては「フックアップ取扱いブランド」として独立のカテゴリーとしております。