強みを活かす成長戦略①

ズームでは、「デジタル信号処理」「アナログ電子回路設計」「ファームウェア」「ユーザーインターフェイス」そして「ボイシング」の5つを、他社製品と差別化するうえで最も重要なコア技術と位置づけています。

 

●デジタル信号処理(DSP)

デジタル化された音声の処理に特化したICチップのこと。楽器はもちろん、スマートフォンなどのモバイル機器にも搭載されています。当社ではDSPプログラミングのノウハウを長年にわたり蓄積してきました。

 

●アナログ電子回路設計

デジタルで処理する音声も、マイクからの入力やスピーカーへの出力の際はアナログ電子回路を通ります。アナログ電子回路の技術によって、音の質や強弱が大きく左右されます。

 

●ファームウェア

電子機器に組み込まれているソフトウェアのこと。「信号処理をする」「ランプを表示させる」などさまざまな役割を果たします。開発にはハードウェアとソフトウェア双方の知識・技術が必要です。

 

●ユーザーインターフェイス

機器におけるスイッチやディスプレイなどユーザーが操作する部分のこと。使いやすい機器を作るためには優れたユーザーインターフェイスデザインが欠かせません。

 

●ボイシング(音創り)

音楽機器に特有の技術がボイシングです。「最終的にどんな音に仕上げるか」を決める、音楽機器の魂ともいえる技術です。世界の多くのユーザーに愛される「ZOOMらしい音」を仕上げるために、エンジニアが最もこだわる部分です。

 

当社では、上記5つのコア技術については社内のエンジニアが企画・設計を担い、それ以外の技術や生産については外部の優秀なパートナーを活用しています。自分たちはコア技術に集中特化することで、付加価値の高い製品開発や、効率的な開発・生産体制の確立、コア技術のさらなるレベルアップを実現しています。

 

強みを活かす成長戦略②

ズームの自社ブランド製品の歴史は、1990年、音声を加工する「デジタルエフェクト(MFX)」技術を使ったマルチエフェクターを販売したことに始まりました。その後、MFX技術に加え、楽器やボーカルの音を個別に録音できる「マルチトラック録音(MTR)」の技術を獲得し、マルチトラックレコーダーを開発・販売しました。

 

2006年には、MFX、MTRの技術にハイレゾ音響処理(HAR)の技術を加え、ハンディ・オーディオ・レコーダーを開発。これは現在、当社の売上高の約半分を占める主力商品となっています。また2009年には、これまでの3つの技術に、画像処理(HVR)の技術を加え、ユニークなハンディ・ビデオ・レコーダーを開発。先駆者として市場を開拓しました。

 

その後も「高性能プリアンプ(AIF)」「タイムコード同期技術(PFR)」「フィールドミキサー(DMX)」「アンビソニックス録音技術(VR)」といった技術を導入し、新商品を開発してきました。このように、保有している技術の組み合わせの上に新しい技術を追加し、新カテゴリーを開拓する商品を開発・販売することで、売上を上乗せしていく戦略が当社の強みです。何層にも積み重ねた技術が競争優位性を確固たるものにし、着実な成長へと導きます。

 

強みを活かす成長戦略③

最初の商品となるマルチエフェクター「ZOOM 9002」を発売した1990年から2010年頃まで、当社ではターゲット・ユーザーを、楽器を演奏するアーティストに絞っていました。その後、2009年に発売したハンディ・オーディオ・レコーダーが主力製品に育っていくまでの過程で、ユーザー層は徐々に広がっていきました。

 

たとえば映像分野では、一眼レフカメラによるビデオ撮影の際、同時に臨場感のあるハイレゾ音声を録音する手段として、当社のハンディ・オーディオ・レコーダーが使われるようになりました。また報道分野では、騒々しいニュースの現場からクリアな音声を拾うために、当社のマイクやレコーダーが使われています。こうした使い方がSNSなどの口コミによって世界に広がり、ZOOMブランドの製品が各分野のニッチな市場を開拓していくことになりました。

 

映画分野ではサウンドデザイナーが新しい音響効果を作成する際の録音機材として、放送分野ではプロの音声スタッフが使う音声機材として、当社製品を活用しています。最近では、「弾いてみた/歌ってみた」動画を発表するユーチューバーや、動画配信サービス(VOD)のコンテンツを制作するコンテンツ制作会社に、小型で高性能、かつリーズナブルな当社の製品が人気を博しています。

 

今後も「音」にこだわる各分野のニッチな市場を継続的に開拓し、ユーザー層の拡大とともに事業の成長を図っていきます。

 

強みを活かす成長戦略④

当社に在籍する90数名の社員のうち、約半数が開発を担当するエンジニアです。そしてそのエンジニアのほぼ全員が、ギター、ベース、ドラム、ピアノなど、何らかの音楽を日常的に楽しむ演奏者です。そもそも当社では、エンジニアを新規採用する際に、「大学でエレクトロニクスまたソフトウェアを専攻したこと」「楽器の演奏ができること」を条件に挙げています。その理由は、「最先端の専門知識」「エンドユーザーの視点」そして「音楽的な感性」、この3つを兼ね備えたエンジニアだからこそ、ユーザーの立場に立った「こんな商品があったらいいな」をカタチにすることができると考えるからです。

 

そして、そのエンジニアから生み出される商品は「提案型商品」です。世の中には、他社のヒット商品を参考にし、アレンジした「ものまね商品」があふれています。ものまね商品を発売すれば、すでにある市場の一定規模のシェア獲得を狙うことができます。そのような戦略を好むメーカーもありますが、当社ではそれを是としません。

 

自社で蓄積してきた技術と、最先端の技術、そして斬新なアイデアで、ユーザーに新しい体験を提供する「提案型商品」を開発し、新たな市場を創出する。それが私たちのこだわりであり、成長の源泉であると考えています。